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2025.12.16

ABWの効果を“数字で示す”には?
オフィス利用状況の見える化と企業価値の関係

ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)は、単なるフリーアドレスやおしゃれなオフィスの導入ではありません。従業員が業務内容に合わせて最適な場所や環境を自律的に選択し、生産性や創造性を最大化するための「働き方の戦略」です。

しかし、多くの企業で「ABWを導入して働きやすくなった(気がする)」「コミュニケーションが活発になった(ように見える)」といった曖昧な評価にとどまっていないでしょうか。

本記事では、なぜABWの効果を「数字」で示す必要があるのか、そしてオフィス利用データをいかにして「企業価値」に結びつけて説明するか、その具体的な手法について解説します。

目次

なぜABWの効果は「数字」で説明する必要があるのか

ABWの導入やオフィスのリニューアルには、多額の初期投資と継続的な運用コストが発生します。この投資の是非を判断する経営層に対し、「なんとなく良くなった」という感覚的な説明は通用しません。

経営はデータを求める:感覚的な働きやすさでは投資判断はできない

経営層が知りたいのは、投じたコストに対してどれだけのリターン(=企業価値の向上)があったか、という客観的な事実です。働きやすさや満足度も重要ですが、それらが最終的に業績や生産性にどう結びついているのかを「数字」で示すことが求められます。

オフィス投資(レイアウト変更・ABW化)の費用が増大

近年のオフィス構築コストは、多様なワークスペースの設置やITインフラの整備、高機能な家具の導入などにより、増加傾向にあります。費用対効果を明確にしなければ、大規模なオフィス投資の意思決定は困難です。

ABWの目的が「企業価値向上」にある以上、数値化は避けられない

ABWの真の目的は、コスト削減や従業員満足度の向上だけではなく、それらを通じて「企業価値(生産性、創造性、エンゲージメント)」を高めることにあります。目的が企業価値の向上である以上、その達成度を測る「ものさし」として、数値化は避けて通れないプロセスです。

海外ではオフィスデータの活用が浸透しつつある背景

欧米の先進企業では、オフィスは「コスト」ではなく「戦略的資産」と捉えられています。センサーや予約システムを活用して「どこで、誰が、どのような活動をしているか」をデータで把握し、オフィスの最適化や働き方の改善に活かす動きが活発化しています。
下記のページで導入事例を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

※導入事例:

データに基づき、数千万ドルのコスト削減を実現|欧州小売企業
ハイブリッドワーク下で柔軟な働き方を実現し、社員のエンゲージメントとスペース効率を向上|オーレスンドクラフト社

ABWの効果を数値化するための“3つの指標

ABWの効果を客観的に示すためには、どのようなデータを取得すべきでしょうか。ここでは、企業価値に直結する「3つの主要な指標」を解説します。

①利用率(座席・会議室)

最も基本的かつ重要な指標が、スペースの「利用率」です。

空席率/席不足がわかる

「いつも席が足りない」「逆に、誰も使っていないエリアがある」といった実態をデータで把握できます。感覚ではなく、実測データに基づいた判断が可能になります。

オフィス面積の最適化(コスト削減)につながる

利用率の低いエリアを特定し、縮小や別用途への転換を検討することで、賃料や光熱費といったファシリティコストの削減に直結します。

会議室のムダ予約や無断キャンセルの実態把握

予約されているのに使われていない「空予約」や、短時間の利用にもかかわらず長時間押さえられている「過剰予約」の実態を明らかにします。

②行動データ(滞在時間・移動パターン)

従業員が「どこで」「どれくらいの時間」活動しているかを把握するデータです。

コラボレーションが実際に増えているか

コラボレーションスペースの滞在時間や利用頻度を測定することで、ABW導入の狙い通りに偶発的な出会いや協働が生まれているかを検証できます。

個人作業と協働スペースの使われ方の最適化

集中ブースが足りているか、逆にカジュアルなミーティングスペースが不足していないかなど、ワーカーの実際の行動に基づいたレイアウトの微調整(チューニング)が可能になります。

③出社率・利用者属性データ

「いつ」「どれくらい」オフィスを利用しているかを把握するデータです。

オフィス全体の出社率・混雑度 → ABWの運用成熟度を判断

オフィス全体の出社率や人口密度の推移を見ます。これにより、ABW導入後に「出社人数が増えたか」「どの時間帯にどのエリアが混雑しているか」といったオフィス全体のABWの浸透度や利用状況を判断します。

※関連記事:【事例付き】ABWとフリーアドレスの違いを徹底解説。

出社行動パターンの変化

ABW導入前後で、出社する曜日や時間帯にどのような変化があったかを分析します。

出社率とエンゲージメントの相関 (アンケート等で測定)

エンゲージメントスコアと、実際の出社率やオフィスでの行動データを掛け合わせることで、「オフィスに来ることがエンゲージメント向上に寄与しているか」といった、より深い分析が可能になります。

データで「企業価値」をどう説明できるのか

これらのデータを集めるだけでは意味がありません。データを用いて「企業価値がどう向上したか」を経営層に説明することがゴールです。

①オフィスの生産性向上を説明できる

ABW導入で「業務モードの変化」をデータで示せる

ABW導入後の「集中ブースの利用率」や「オープンスペースの利用率」を比較することで、社員がどのような業務モードでオフィスを使っているかを客観的に把握できます。

例えば、集中ブースの利用率が高まっている場合、従来は周囲の雑音や中断により妨げられていた業務が、必要なタイミングで集中できる環境が整ったことを示すデータ上の根拠となります。

会議室利用率最適化 → 会議回数/会議時間の削減

会議室の実利用データを分析し、ムダな予約を削減することで、「会議を探す時間」や「会議室が取れないことによる機会損失」がどれだけ削減されたかを金額換算で示すことも可能です。

②エンゲージメント向上を裏付けられる

出社率の改善や交流頻度の増加を可視化

「ABW導入後、オフィスの居心地が良くなり出社率がX%向上した」「コミュニケーションエリアの利用率がY%増加した」といったデータは、エンゲージメント向上の裏付けとなります。

オフィスを「行きたい場所」に変えることが企業価値向上に直結

ワーカーが自律的に「行きたい」と思えるオフィス環境をデータに基づいて整備することは、離職率の低下や優秀な人材の獲得(採用力強化)といった、長期的な企業価値向上に直結します。

③オフィス投資のROIを数値で説明できる

過剰な面積削減/不足のバランスをデータで判断

データに基づき、過剰なオフィス面積を最適化(削減)することで得られるコスト削減効果(リターン)を明示できます。

ABW導入コストを回収するシミュレーションが可能に

「生産性向上(X円)」「コスト削減(Y円)」「エンゲージメント向上による離職率低下(Z円)」を積み上げることで、ABW導入にかかった投資(コスト)を何年で回収できるか、という具体的なROIシミュレーションを提示できます。

ABWの効果測定における“データ活用の落とし穴”

オフィスデータの活用は強力な武器になりますが、注意すべき「落とし穴」も存在します。

①データを取っても運用に活かせない

よくある失敗が「データを取って終わり」になることです。レポートを見て満足するのではなく、「利用率が低いエリアのレイアウトを変更する」「会議室の予約ルールを見直す」といった具体的なアクションにつなげなければ意味がありません。

②断片的なデータ(会議室だけなど)では全体像が見えない

会議室の予約データだけ、あるいは座席の利用率だけといった断片的なデータでは、オフィスの使われ方の全体像は掴めません。座席、会議室、フリースペース、人の流れといったデータを複合的に分析することで、初めて本質的な課題が見えてきます。

③個人データに踏み込むとプライバシーの問題が出る

「誰が、いつ、どこにいたか」を詳細に追跡することは、ワーカーに「監視されている」という不快感を与え、ABWのメリットを根幹から揺るがします。ABWは「人を自由にする」働き方なので、監視になるデータの取り方はNG。

ABWの目的は、管理ではなくワーカーの自律性を高めることです。個人の特定につながるデータの取得は避け、あくまで「特定のエリアが何時に混雑しているか」「どの会議室がどれくらい利用されているか」といった匿名化・集計化されたデータを用いるべきです。これらのデータだけでも、オフィス改善に必要なインサイトは十分に得られます。

どうやってデータを集め、見える化すればよいのか?

では、具体的にどのような手法でデータを収集・可視化すればよいのかを解説します。

座席センサー/予約データの活用

座席やブースに人感センサーや着席センサーを設置することで、「予約上」ではなく「実際」の利用状況を把握できます。オフィス利用データにおいて、実際の滞在情報(実利用データ)は最も価値が高い情報の一つです。

会議室予約 × 実利用の乖離データ

会議室の予約システムと、センサーや入退室ログを連携させます。これにより、無断キャンセル、ムダ予約、過剰予約(予約時間と実利用時間の差)の実態が数字で明確にわかります。このデータに基づき、予約ルールの最適化や自動キャンセル機能を導入できます。

オフィス全体のヒートマップデータ

センサーやWi-Fi、カメラ(匿名化処理を前提)などを用いて、オフィス全体の人の分布を「ヒートマップ」として可視化します。これにより、どのエリアが「価値を生む場所(=よく使われる場所)」か、逆に使われていない場所はどこかが一目瞭然になります。これは、ワーカーがABW環境下で実際にどのような居場所を選択しているかの実態把握に直結します。

こうした複数のデータを統合的に収集・分析し、従業員に「会議室の空き状況」や「混雑状況」を分かりやすく提示するソリューションを活用することで、データ活用は一気に現実味を帯びてきます。

会議室の可視化レポート一例

ABWの効果を最大化するには「データの定点観測」が不可欠

データは一度取得して終わりではありません。ABWの効果を最大化し、企業価値を高め続けるためには、データを継続的に取得し、改善サイクルを回し続ける「定点観測」が不可欠です。

オフィス運用改善 → ABWを段階的に強化

データ分析で見つかった課題(例:特定のブースが常に満席)に対し、レイアウト変更や増設といった対策を打ちます。対策後、再びデータを測定し、効果が出ているかを検証します。

利用率の改善が企業価値にどう影響するかを追跡

オフィスの利用率・満足度が上がった結果、エンゲージメントスコアや生産性指標がどう変化したかを長期的に追跡し、経営層にレポートで示し続けることが重要です。

本資料では、現代の働き方とオフィス空間の関係を紐解きながら、オフィスリノベーションの効果、ABWやフリーアドレス導入のメリットなどをご紹介しています。

資料の概要

  1. 現代の働き方とオフィス空間の相関関係
  2. オフィスリノベーションとその効果
  3. ABWとフリーアドレスの導入効果
  4. 「働き方」に対するNimwayのアプローチ
  5. まとめ

まとめ|ABWは「数字で語れる働き方」へ

「なんとなく働きやすくなった」という感覚的な評価だけでは、多額の投資を伴うオフィス戦略の正当性を経営層に示すことは困難です。利用率や行動データを可視化し、生産性やエンゲージメントへの貢献を「数字」で示すことこそが、オフィス投資をコストではなく、企業価値を高めるための戦略的投資につながります。

データを活用する上で重要なのは、一度測定して終わりにするのではなく、定点観測によって変化を捉え、改善のサイクルを回し続けることです。客観的なデータを蓄積することで、迷いのない意思決定と、従業員が真にパフォーマンスを発揮できる環境づくりが可能になります。

まずは現状のオフィス利用データを可視化し、実態を正しく把握することからはじめてみてはいかがでしょうか。

スマートオフィスソリューション「Nimway」は、部屋・座席、フロア、拠点など各スペースごとの実際の稼働率やピークタイムを把握し、導入効果の可視化や改善検討に活用できます。

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著者情報

Nimwayメディア編集部

ワークスペース管理やデータ分析を可能にするスマートオフィスソリューション「Nimway」を提供するとともに、フリーアドレスやABWを導入する企業のオフィス環境構築を支援。これからオフィス環境の変革を検討したい企業様に向けて、その経験やノウハウを公開していきます。