働き方改革やオフィスの省スペース化を目的に「フリーアドレス」を導入する企業が増えています。しかし、導入後に現場から最も多く寄せられる不満の一つが「誰がどこにいるかわからない」という問題です。
「〇〇さん、今日出社してる?」
「広いオフィスを探し回って疲れた」
こうした声が聞こえてくる場合、放置しておくと業務効率の低下だけでなく、フリーアドレス制度そのものの形骸化を招きかねません。
本記事では、フリーアドレス特有の「居場所問題」が引き起こす課題と、それを解消するための具体的な運用ルール、そして根本解決につながるツール活用について解説します。
「探すのが少し面倒なだけ」と捉えるのは危険です。社員の居場所が可視化されていない状態は、組織にとって見えないコストとなります。
例えば、ある社員を探すために1日5分を費やしているとします。社員数が100名いるオフィスで、全員が同様に時間を浪費したと仮定すると、組織全体で1日あたり約8時間(1人分の日当相当)が無駄になっている計算になります。
月単位、年単位で見れば、その経済的損失は決して無視できるものではありません。
フリーアドレスの本来の目的は「部署を超えたコミュニケーションの活性化」であるはずです。しかし、居場所がわからないと、「ちょっと相談したいけど、どこにいるかわからないから後回しにしよう」「探すのが面倒だからメールで済ませよう」という心理が働きます。
結果として、対面での偶発的な会話が減り、逆にコミュニケーションが希薄になるという本末転倒な事態を招きます。
外部からの電話の取次や、来客対応、あるいは災害発生時などの緊急事態において、「誰が出社していて、どこにいるか」を即座に把握できないことはリスク管理上の課題です。
また、マネージャーにとっては部下の姿が見えないことで、労務管理や対面では把握できた体調面や精神的なケアが難しくなるという側面もあります。
システム導入などのコストをかけずに、まずは運用ルールで改善できる方法がいくつかあります。小規模なオフィスであれば、これらの工夫で解決できる場合もあります。
完全な自由席にするのではなく、ある程度「目的別」にエリアを区切る方法です。
「集中したいときはあそこ、相談があるときはあそこ」と、行動パターンから居場所を予測しやすくなります。
SlackやTeamsなどのチャットツール、あるいはGoogleカレンダーやOutlookの予定表を活用します。 ステータス欄や予定のタイトルに「在宅」「3F窓際」「会議室A」など、現在の居場所を入力するルールを徹底します。
この方法はコストがかかりませんが、「入力忘れ」や「更新忘れ」が頻発しやすいのがデメリットです。移動のたびに入力を求めるのは社員にとって負担となるため、定着には根気強いアナウンスが必要です。
フリーアドレスと固定席の中間である「グループアドレス」を採用するのも一つの手です。「営業部はAエリアとBエリア、開発部はCエリア」というように部署ごとにエリアを割り当て、その中での着席を自由にします。
探す範囲が限定されるため、完全フリーアドレスに比べて人を探す難易度は大幅に下がります。
社員数が数十名を超える場合や、フロアが分かれている場合、前述のアナログな運用では限界があります。「入力忘れ」を防ぎ、リアルタイムで正確な位置を把握するには、座席管理システム(居場所可視化ツール)の導入が効果的です。
多くの座席管理システムには、以下のような機能が備わっています。
参考:Nimway|座席予約や在席管理で、フリーアドレスの生産性を向上
最大のメリットは「探す時間のゼロ化」です。手元のスマホやPCで検索すれば簡単に居場所がわかるため、広いオフィスを歩き回る必要がなくなります。
また、「あの人があそこにいるなら、隣の席をとって話しかけよう」といった戦略的なコミュニケーションが可能になり、フリーアドレス本来のメリットを最大化できます。
さらに、システムによっては「どの席が人気か」「誰と誰がよく近くに座っているか」といったデータが蓄積されるため、次回のレイアウト変更や組織活性化の施策に活かすことも可能です。
座席管理システムは多機能なものからシンプルなものまで様々です。選定の際は以下のポイントを確認しましょう。
最も重要なのは「社員が面倒くさがらずに使ってくれるか」です。操作が複雑だと、結局「入力忘れ」が発生し、システム上の情報と実態が合わなくなります。
「スマホでQRコードを読むだけ」「入室時に社員証をかざすだけ」など、数秒で操作が完了するものを選びましょう。
普段使っているチャットツールやグループウェアと連携できるかもポイントです。
チャットツールのプロフィール画面に現在の座席情報が自動反映される機能などがあると、わざわざ専用アプリを開く手間が省けます。
単なる座席管理だけでなく、会議室予約や備品管理もできる多機能タイプもあれば、座席抽選機能に特化したシンプルなタイプもあります。
自社の課題が「居場所把握」だけなのか、それとも「オフィスの運用効率化全体」なのかによって、適切なツールを選びましょう。
最後に、フリーアドレスにおける「居場所」というキーワードには、物理的な位置だけでなく「自分の居場所(所属感)」という意味も含まれています。 固定席がなくなることで、「会社に自分の居場所がない」という疎外感を感じる社員もいます。
物理的な「位置」をツールで可視化しつつ、心理的な「安心感」を制度や文化で作っていくことも、フリーアドレスを成功させる重要なポイントです。
フリーアドレス導入後の「居場所がわからない」問題は、放置すると組織の生産性を下げる要因になります。
「誰がどこにいるか」がクリアになれば、社員は安心して業務に取り組み、本来の目的である活発なコミュニケーションが生まれます。自社の規模や課題感に合わせて、最適な「居場所の可視化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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